たけしのクライミング日記

クライミングに関する日記

比叡ボルダー (2/25~28)

春休みを利用し、長野県から下道で宮崎県までやってきた。高速を使えば快適なのだろうが、今回のツアーの参加人数は1人。一般大学生が高速代をポンと出せるはずもなく、時間と労力を代償にケチることにした。

幸いなことに僕の実家は兵庫県なので、1週間ほどの帰省を旅路の途中に挟むことができた。そのため運転距離は実質のところほとんど半分になった。

それでも宮崎まではやはり遠かった。

 

2/24に丸一日かけて移動し、この日は日之影温泉に浸かって運転の疲れを癒すことにした。サウナと露天風呂もあり、実に快適であった。

 

さて、本題のツアーの内容だが、ツアーの成果と呼べるような完登は1つだけ。
その課題は「アナと植木 1級」。

初のハイボルダーで一生忘れることの出来ないクライミングが出来た。
以下よりツアーの詳細となる。

 

2/25(土) 快晴
ツアー初日。googleマップにない道を進み、タブの木エリアの駐車場へと車を走らせた。せっかくのツアーでマット不足敗退は悔しすぎると思ったので、今回は3枚ものマットを持参した。アプローチの歩道を少し進むと高難度課題が多く存在する「神宝岩」がすぐに見えた。僕が挑めるような課題はなく、眺めるだけでスルー。

ぼちぼちと歩いていると「オブリガード 3級」や「デッドマン 2級」を見つけ、それとなく試してみるもあまりできる気がせず、他の良さげな課題を探すために、再び歩を進めた。

 

そこで出会ったのが「アナと植木 1級」

 

比叡ツアーに向けてかなりトポを読み漁っており、それなりに多くの課題に目をつけていたが、この課題は全くのノーマークだった。
7mほどのスラブで細かなスタンスが確認でき、スラブが得意な僕はこのラインに可能性を見出してしまった。それが苦しみの始まりとなるとは知らずに...

 

この日は3,4時間ほど格闘し、核心パートの右足のハイステップが出来た。直後足が外れ落下したが、まさかのワンデイ!?という希望が生まれ、その後もトライを重ねるも序盤パートの成功率が下がっていき、迷走。核心パートの試行回数を上げることができない歯がゆさから、別の岩を触りに行った。

そこでかねてから目をつけていた「乳酸MAX 2級」をやってみることにした。傾斜があるもののホールドの持ち感はそこまで悪くなく、リップ取り手前まで繋げることができた。しかしこのリップが遠くなかなか届かず、別のクライマーが来たこともありこの日は終了とすることにした。

 

2/26(日) 快晴

実は2/21~2/23に山口県にて、陶ヶ岳と亀山でロープソロをしたことと、昨日の乳酸MAXを半端に粘ったせいで連日のクライミング三昧となり、指皮が若干痛む。

なのでこの日は午後だけ軽く登ることにした。めあては勿論、昨日惜しいところまでいった「アナと植木」と「乳酸MAX」。

しかしこの日はどちらも上手くいかず、成果のないまま1日を終えることに。指皮、肉体の疲労を鑑みて明日はレスト日にすることにした。

 

2/27(月) 快晴

雲一つない青空の中、何もできない自分が情けなく思えた。事前に計画をもっと煮詰めていれば、コンディションを仕上げていればワンデイで解決したのでは、等のたられば論が頭の中を駆け回る。そこで気分転換に車を走らせることにした。青空の中のドライブは気持ちよく、青雲橋の道の駅で食べたアイスクリームが美味しかった。
この日の夜にツアーの方針として

・5級付近の簡単な課題を大量に登る
・「アナと植木」と「乳酸MAX」のどちらか、又は両方の完登を狙う

この2択になった。

前者は努力次第で可能に思える。後者を選ぶと完登できなかった場合の成果は0であり、後々後悔するのでは、と思えた。
そこで前者を選ぶ方向でほとんど決まりかけ、エリアをどのように回れば効率が良いかトポで調べることにし、岩探しと移動の労力がそれなりにある事に気付いた。思えば当然のことである。
この気付きから、
”何のために宮崎まで来たのか?”
という問いが生まれ、
”強烈なクライミング体験をするために宮崎まで来た”
という答えに至った。岩探しは強烈な体験にはならない。
そこで覚悟を決め、「アナと植木」1本に絞ることにした。二兎は追わない。

 

2/28(火) 快晴

連日の快晴には勇気づけられた。早朝のフリクションの良いタイミングを狙おうと日が出始めたころに出発。しかし足が冷えすぎてスタンスを踏めているのかわからない状況が続き、結局日差しが強くなり始めるころに再開した。

すると核心パートの右足のハイステップに成功し、右手が核心の終わりを告げるホールドに掠ったところで落下。落下後に尋常じゃない程心拍数が上がっていることに気付き、一度落ち着くために昼飯休憩をとることにした。
前日の不安でネガティブな気持ちは消え去り、絶対できるという強い確信を持てた。

 

昼飯には袋麵を食べた。食事中にソールの柔らかい靴の方がいいのではと思いつき、柔らかめのシューズを片手に再び岩場に帰ってきた。

思惑通り柔らかめのソールはこの課題にバチバチにハマり、特に下部のムーブが安定するようになった。完登できる、という確信はしだいに大きくなっていき、高まる気持ちを抑えながらのトライが続いた。そして完登の時は不意に現れた。

 

集中力を高めるためにスマホの電源を切り、心拍数が落ち着いたころ合いを見計らってスタート。序盤のパートはもはや自動化されていた。核心パートへ。
このあたりから心拍数が急上昇していき、右足を上げきる前に大きく息を吐いた。
ハイステップは成功。そして遂に右手はホールドを掴んだ。
少し妙な取り方をしてしまったが、死んでも放すものか、と必死の思いで握りこんだ。未知の領域の上部パートに突入し、下を見るとマットがとても小さかった。
核心パートを突破した喜びと、高さの恐怖で涙が滲み、手は震えて、心臓はうるさいほどに拍動していた。上部は簡単なムーブが続いたが、キツかった。
程なくしてトップアウトし安堵感から岩の上でへたり込んだ。岩から降り、マットに寝転ぶ。しばらくは余韻で動けなかった。

 

「乳酸MAX」をはじめとし、手に付けてすらいない目当て課題はまだ沢山あったが、今更上る気になれず。ここでツアーを切り上げることにした。

 

去年の今頃、本格的にクライミングを始めたいと思い、ボルダリングジムへも習慣的に通うようになっていた。それから1年ほどでここまでの感動的な経験が出来るとは思ってもいなかった。

1級というグレードに関しては、半年前に小川山の「流れの中に」を完登し一応は経験していたが、この課題は体感的には3級ほどで、自分の中で納得は言っていなかった。

今回の課題はのべ3日かかったという事実と、その内容から十二分に納得のいく1級であった。3日目のレスト日に思い至った”強烈なクライミング体験”が出来たため、このツアーは大成功といえるのではないだろうか。

上記にあるように完登した時、スマホの電源は切ってあったので動画はない。
参考にミキペディア氏投稿の完登動画を載せておく。ムーブは上部以外同じ。

比叡_アナと植木_1級_151209 - YouTube

 

(「アナと植木」って名前、もっとかっこいい名前ならなー)