たけしのクライミング日記

クライミングに関する日記

三倉岳(3/13~17)

三倉岳は広島県大竹市にある、花崗岩の岩場である。
市街地からは車で30分程度でアクセスでき、三倉岳の麓には無料キャンプ場があり、クライミングするにはうってつけの場所である。

キャンプ場から岩場までのアプローチは30~40分程度、そこそこの急階段が続き、日差しが強いと汗ばむ。
岩場まで登ってしまえば各エリア同士の間隔が近いので、色々なラインを楽しめる。

 

以下より日記

3/13(晴れ)

グラウンド事故から4日、5.7~5.10a各一本ずつリードした。
技術的には問題ないが、リードの恐怖との戦いだった。リードソロはロープを手繰る動作が多くなるので、「手繰り落ちしたら...」と考えると、足がすくむ。
5.9のルートでは後半にワイドのセクションがあった。初のワイドで非常に時間がかかったが、気合でOSした。

下山中、愛犬コタローと散歩をしている両粂さんと出会った。

 

3/14(晴れ)

この日も一桁台のルートをいくつかリードした。
スポートルートでは問題なくOSできたが、この日1本だけ登ったクラックにて、カムが外れるという大事件が起きた。
そのルートは5.9+とされており、フレアしたクラックの左右に探せばガバが存在する。1便目ではガバに気付けず、何とかジャミングで登ろうとするも途中できつくなり、テンションしようとした。フレアしているためセットする場所が見つけづらく、無理くりセットした所、セット箇所の岩が脆く、テンションをかけると「パリッ」と岩が割れフォールした。
幸いなことにその直前で固め取っていたため、二度目のグラウンドは免れた。

気分を落ち着けて2便目へ。冷静にガバを探し、冷静にクラックが平行になっているところを探してセットしてRP。ギリセーフ?

 

3/15(晴れ)

レスト日

 

3/16(晴れ)

この日はクラックを4本、5.10cのスラブ(スポート)をやった。そのうちワイドは2本。やっぱり慣れないワイドでは無駄に体力を使ってしまう。

モス・クラック以外はRP出来たが、このモス・クラックが曲者だった。
序盤のハンドセクションは快適であったが、後半のワイドがキツかった。
そもそもキャメロット#4が手持ちで一番大きいサイズのカムだったので、ワイドセクションではほとんどプロテクションが取れなかった。慣れないワイドをランナウトする勇気はなかったので、諦めてA0しながら登ることにした。

それでもこのワイドは辛いもので、必死こいて何とか終了点まで行けた。(Tスタックなるものをすると楽らしい)

 

3/17(曇り)

昨日の疲れが取れないまま、ヒップクラックとふぐりスラブをやってきた。
ヒップクラックは無事OS。素晴らしい内容だった。
ふぐりスラブでは、5.10aをOSした後、スラブには自信があったので中央ラインの5.11cのスラブをトップロープで試してみることに。下部と上部の核心でテンションをかけたものの、フットホールドが見つかれば一発で登れた。
今思えば、TRで繋げ→リードトライ、とするべきだったが、なんだかもう疲れちゃってその場を去った。もったいない...

 

今回、僕は100岩記載の2002年のトポを使ったのだが2023年現在ではかなりのラインが増えていた。最新版のトポもあるようなので次回はそれを入手したい。

 

【事故報告】リードソロ中のグラウンドフォール

[事故の概要]

2023/3/17、山口県某所でリードソロ中にグラウンドフォールしました。
クラックルートのオンサイトトライ中で、ロングフォールしてしまい、地面から5,6m程しか離れていなかったため、グラウンドする結果になってしまいました。

幸いなことに全身が打ち付けられる前にテンションがかかったので、左足首の捻挫と各所の擦り傷だけで済みました。

 

[原因]

端的に言うと経験不足が招いたものでした。

クラックルートも、リードソロも片手で数えられる程しか経験しておらず、プロテクションをとる間隔や、リードソロでロープを繰り出した量と落下距離の関係がいまいち把握できていなかったことが、ロングフォールの原因です。

また数回のみのリードソロの経験でしたが、プロテクションが少なくても「上手くできている」と思ってしまい、多少のランナウトは普通の事だと思っていました。
しかし、地面付近でのランナウトは当たり前ですがグラウンドに直結しています。
なので、今回の事故はいずれ起こり得たものだと考えられます。

 

[今後]

初心者の内のオンサイトトライは、特にトラッドルートだとプロテクションを取りずらいという危険があります。

しかし、これからもソロでクライミングをしていきたいと考えているので、オンサイトトライは避けられないものとなります。(トップロープがかけられる場合を除く)

これからのオンサイトトライでは、危険を感じたら突っ込まずにA0するようにします。

小川山 サブウェイ 3級 

比叡ツアーのブログを書いたついでに、もう一つの感動的なクライミング体験についてもブログに綴ろうと思う。

 

2022年の夏休み。その年の2月はじめ辺りにクライミングを本格的に始め、6月ごろから外岩デビューを果たした。インドアのジムに慣れ親しんでいたので、ジムでは簡単な6級の課題ですら、外岩では手に負えない程であった。

それでも自然の岩を登ることの悦びは強烈で、必死に岩と向かい合っていると、5級以下はそこそこ登れるようになってきた。

夏休みに入り自由な時間が圧倒的に増えたので、岩場に通いまくった。そんな中巡り合った課題が小川山のヴィクターと呼ばれる岩のトラバース課題、「サブウェイ 3級」である。3級の課題はそれまで登れたことがなく、登れるとも思っていなかったが、物は試しと思い触ってみることに。

すると意外なほど好感触。その日は他の課題をさんざん触った後で、打ち込む体力はなく、次回へお持ち帰りという形になった。

1週間ほどのちに再び小川山へサブウェイのために訪れた。その日は深夜から早朝にかけて雨が降り、上部が被った形状のヴィクター以外は濡れに濡れていた。

雨上がりという事もあり、小川山にクライミングしに来ている人はほとんどいなく、貸し切りでサブウェイに取り組んでいると、Fさん(50~60代の男性)がやってきた。ほかの岩は濡れすぎて登れないとのことだった。そこで、Fさんとサブウェイをセッションすることになった。

ベテランのFさんと協力し、その日1日かけて全ムーブをばらすことが出来た。セッションとは何て楽しいものなんだと思った。

それからまた1週間ほどのち、友達2人と小川山へ向かうことになった。2人には申し訳なかったが、個人的にサブウェイの決着をつける時間を作ってもらった。

つい最近にムーブをばらしたこともあり、核心を含む全てのムーブを思い出すことは容易であった。そしていざ繋げのトライ。核心はクリアしたものの、トラバース終盤で落ちてしまった。2回目のトライでは核心で落下。繋げることの難しさを実感した。

そして3回目のトライ。集中力を高め緊張感を持ちつつリラックスした状態で、スタートホールドを持つ。核心を突破し、1回目で落下した箇所も超えトラバースは無事に通過。リップに出る直前で焦り、足を滑らせたが気持ちで持ち堪えた。そして上部へトップアウト。集中から解き放たれ、頂上で頭を抱えてしゃがみこんだ。

出来たんだ...

感無量であった。

圧倒的解放感のもと岩から降り、マットの位置調整をしてくれた友人に感謝を述べた。

この体験はつい最近の「アナと植木」を登るまでは僕のクライミング史上最も感動的なものであった。1つの課題に日を跨いでまで打ち込み、成功する。このような行為がもたらす悦びは計り知れない。

いつかまた、何日も思いつめるような課題に直面するとき、このような成功体験が成功の糧となることは間違いないだろう。これからも精進していきたい。

 

 

 

比叡ボルダー (2/25~28)

春休みを利用し、長野県から下道で宮崎県までやってきた。高速を使えば快適なのだろうが、今回のツアーの参加人数は1人。一般大学生が高速代をポンと出せるはずもなく、時間と労力を代償にケチることにした。

幸いなことに僕の実家は兵庫県なので、1週間ほどの帰省を旅路の途中に挟むことができた。そのため運転距離は実質のところほとんど半分になった。

それでも宮崎まではやはり遠かった。

 

2/24に丸一日かけて移動し、この日は日之影温泉に浸かって運転の疲れを癒すことにした。サウナと露天風呂もあり、実に快適であった。

 

さて、本題のツアーの内容だが、ツアーの成果と呼べるような完登は1つだけ。
その課題は「アナと植木 1級」。

初のハイボルダーで一生忘れることの出来ないクライミングが出来た。
以下よりツアーの詳細となる。

 

2/25(土) 快晴
ツアー初日。googleマップにない道を進み、タブの木エリアの駐車場へと車を走らせた。せっかくのツアーでマット不足敗退は悔しすぎると思ったので、今回は3枚ものマットを持参した。アプローチの歩道を少し進むと高難度課題が多く存在する「神宝岩」がすぐに見えた。僕が挑めるような課題はなく、眺めるだけでスルー。

ぼちぼちと歩いていると「オブリガード 3級」や「デッドマン 2級」を見つけ、それとなく試してみるもあまりできる気がせず、他の良さげな課題を探すために、再び歩を進めた。

 

そこで出会ったのが「アナと植木 1級」

 

比叡ツアーに向けてかなりトポを読み漁っており、それなりに多くの課題に目をつけていたが、この課題は全くのノーマークだった。
7mほどのスラブで細かなスタンスが確認でき、スラブが得意な僕はこのラインに可能性を見出してしまった。それが苦しみの始まりとなるとは知らずに...

 

この日は3,4時間ほど格闘し、核心パートの右足のハイステップが出来た。直後足が外れ落下したが、まさかのワンデイ!?という希望が生まれ、その後もトライを重ねるも序盤パートの成功率が下がっていき、迷走。核心パートの試行回数を上げることができない歯がゆさから、別の岩を触りに行った。

そこでかねてから目をつけていた「乳酸MAX 2級」をやってみることにした。傾斜があるもののホールドの持ち感はそこまで悪くなく、リップ取り手前まで繋げることができた。しかしこのリップが遠くなかなか届かず、別のクライマーが来たこともありこの日は終了とすることにした。

 

2/26(日) 快晴

実は2/21~2/23に山口県にて、陶ヶ岳と亀山でロープソロをしたことと、昨日の乳酸MAXを半端に粘ったせいで連日のクライミング三昧となり、指皮が若干痛む。

なのでこの日は午後だけ軽く登ることにした。めあては勿論、昨日惜しいところまでいった「アナと植木」と「乳酸MAX」。

しかしこの日はどちらも上手くいかず、成果のないまま1日を終えることに。指皮、肉体の疲労を鑑みて明日はレスト日にすることにした。

 

2/27(月) 快晴

雲一つない青空の中、何もできない自分が情けなく思えた。事前に計画をもっと煮詰めていれば、コンディションを仕上げていればワンデイで解決したのでは、等のたられば論が頭の中を駆け回る。そこで気分転換に車を走らせることにした。青空の中のドライブは気持ちよく、青雲橋の道の駅で食べたアイスクリームが美味しかった。
この日の夜にツアーの方針として

・5級付近の簡単な課題を大量に登る
・「アナと植木」と「乳酸MAX」のどちらか、又は両方の完登を狙う

この2択になった。

前者は努力次第で可能に思える。後者を選ぶと完登できなかった場合の成果は0であり、後々後悔するのでは、と思えた。
そこで前者を選ぶ方向でほとんど決まりかけ、エリアをどのように回れば効率が良いかトポで調べることにし、岩探しと移動の労力がそれなりにある事に気付いた。思えば当然のことである。
この気付きから、
”何のために宮崎まで来たのか?”
という問いが生まれ、
”強烈なクライミング体験をするために宮崎まで来た”
という答えに至った。岩探しは強烈な体験にはならない。
そこで覚悟を決め、「アナと植木」1本に絞ることにした。二兎は追わない。

 

2/28(火) 快晴

連日の快晴には勇気づけられた。早朝のフリクションの良いタイミングを狙おうと日が出始めたころに出発。しかし足が冷えすぎてスタンスを踏めているのかわからない状況が続き、結局日差しが強くなり始めるころに再開した。

すると核心パートの右足のハイステップに成功し、右手が核心の終わりを告げるホールドに掠ったところで落下。落下後に尋常じゃない程心拍数が上がっていることに気付き、一度落ち着くために昼飯休憩をとることにした。
前日の不安でネガティブな気持ちは消え去り、絶対できるという強い確信を持てた。

 

昼飯には袋麵を食べた。食事中にソールの柔らかい靴の方がいいのではと思いつき、柔らかめのシューズを片手に再び岩場に帰ってきた。

思惑通り柔らかめのソールはこの課題にバチバチにハマり、特に下部のムーブが安定するようになった。完登できる、という確信はしだいに大きくなっていき、高まる気持ちを抑えながらのトライが続いた。そして完登の時は不意に現れた。

 

集中力を高めるためにスマホの電源を切り、心拍数が落ち着いたころ合いを見計らってスタート。序盤のパートはもはや自動化されていた。核心パートへ。
このあたりから心拍数が急上昇していき、右足を上げきる前に大きく息を吐いた。
ハイステップは成功。そして遂に右手はホールドを掴んだ。
少し妙な取り方をしてしまったが、死んでも放すものか、と必死の思いで握りこんだ。未知の領域の上部パートに突入し、下を見るとマットがとても小さかった。
核心パートを突破した喜びと、高さの恐怖で涙が滲み、手は震えて、心臓はうるさいほどに拍動していた。上部は簡単なムーブが続いたが、キツかった。
程なくしてトップアウトし安堵感から岩の上でへたり込んだ。岩から降り、マットに寝転ぶ。しばらくは余韻で動けなかった。

 

「乳酸MAX」をはじめとし、手に付けてすらいない目当て課題はまだ沢山あったが、今更上る気になれず。ここでツアーを切り上げることにした。

 

去年の今頃、本格的にクライミングを始めたいと思い、ボルダリングジムへも習慣的に通うようになっていた。それから1年ほどでここまでの感動的な経験が出来るとは思ってもいなかった。

1級というグレードに関しては、半年前に小川山の「流れの中に」を完登し一応は経験していたが、この課題は体感的には3級ほどで、自分の中で納得は言っていなかった。

今回の課題はのべ3日かかったという事実と、その内容から十二分に納得のいく1級であった。3日目のレスト日に思い至った”強烈なクライミング体験”が出来たため、このツアーは大成功といえるのではないだろうか。

上記にあるように完登した時、スマホの電源は切ってあったので動画はない。
参考にミキペディア氏投稿の完登動画を載せておく。ムーブは上部以外同じ。

比叡_アナと植木_1級_151209 - YouTube

 

(「アナと植木」って名前、もっとかっこいい名前ならなー)